こんにちは、
「歌うことが健康にいい」とよく耳にしますが、実は**“どう歌うか”**によって、脳への効果は大きく変わるんです。
特に注目したいのが、**みんなで同じメロディーを歌う“斉唱”**ではなく、役割を分担して歌う“ハーモニー(パート歌唱)”。
実はこの「ハーモニーを歌う」という行為が、認知症予防や脳の活性化にとても効果的だという研究が増えてきています。今回はその理由を、やさしくご紹介します。
1. 脳の“総合力”が問われる、ハーモニーの歌唱
斉唱では、全員が同じメロディーを歌うため、脳の使い方は比較的シンプルです。
一方でパートを分けて歌うと、次のようなことを同時に処理する必要があります:
- 自分のパートの音程とリズムを守る
- 周りの人のパートを聴きながらハーモニーを保つ
- 歌詞を覚えて、発音や表情も意識する
これにより、前頭前野(判断や集中力)や側頭葉(言語や聴覚)など、複数の脳領域が活性化されるんです。
2. “覚えて、聴いて、合わせる”でワーキングメモリが鍛えられる
ハーモニーを歌うときには、自分の音をしっかり覚えながら、同時に他の人のパートも聴く必要があります。
これは「ワーキングメモリ(作業記憶)」という脳の機能を大きく使います。
この機能は買い物のリストを覚える、話の流れを理解するなど、日常生活でも重要なもの。
高齢になると衰えやすい部分ですが、歌うことで自然にトレーニングできるのです。
3. 一人ではできない“協調”が、社会的な脳を刺激する
ハーモニーは、他の人と**「音を合わせる」協調行動**が欠かせません。
「ここはソプラノが主役だから、私は控えめに」
「今のコード進行にうまく乗れた!」
…こういった“他者とのやりとり”は、社会的認知能力を高めることがわかっています。
これは人との関係を築いたり、感情を読み取る力で、認知症予防にも大きく関わっているのです。
4. 新しい音やリズムに挑戦=脳の“可塑性”が高まる!
斉唱では同じメロディーを何度も繰り返すことが多いですが、パート歌唱では違います。
「この曲、私アルトなの?前回はソプラノだったのに…」
「このリズム、ちょっと難しい…でも楽しい!」
こうして新しいパターンにチャレンジすることが、神経可塑性(しんけいかそせい)=脳の柔軟性を高めます。
新しい回路をつくる力が高まれば、**年齢に関係なく“脳は育つ”**のです。
5. 感動と達成感が、脳内の“やる気ホルモン”を出す
ハーモニーの美しさや、みんなとピタッと合ったときの感動は、ドーパミンという脳内物質を分泌させます。
これは「やる気ホルモン」「報酬系」とも言われ、
- 気持ちを前向きにする
- ストレスを減らす
- 脳を活性化する
…と、心と脳の両方に良い効果があります。
「難しかったけど、できた!」という達成感が、脳のエネルギー源になるんですね。
🔬ちょっと専門的な話(研究紹介)
実際の研究でも、ハーモニーのような複雑な音楽活動は、単純な音楽活動よりも広範囲の脳を刺激し、認知機能を保つ力が高いとされています。
- Verghese et al.(2003)では、定期的な音楽活動が認知症の発症リスクを下げると報告。
- Baird & Samson(2015)によると、音楽を通じた認知刺激は、認知予備力(将来的な脳の余力)を高める効果があるとされています。
🎵まとめ:歌うなら「役割のある歌」を!
パートごとに分かれて歌う合唱は、
- 脳のさまざまな機能を同時に使い、
- 他者との協調を通じて社会的な刺激を得て、
- 新しい挑戦で脳の柔軟性を保ち、
- 達成感でやる気ホルモンを活性化する
という、**“究極の脳トレ”**ともいえる活動なんです。
シニアの方こそ、斉唱だけでなく「ハーモニー」に挑戦してみませんか?
最初は「難しそう…」と思っても大丈夫。
少しずつ慣れていけば、楽しみながら脳を元気に保つことができますよ。