声楽や合唱は歌声による音楽です。歌声は、肺に空気が入り、それを留める事が出来る身体の特徴があって、初めて声になります。そんな事を理解しようとする時、肺と空気、そして身体機能の基礎を理解する事は大切だと思います。歌う事は肺機能の訓練とも言えるし、訓練をすれば身体機能は向上できるからです。以下、肺と空気、つまり肺活量と加齢による影響についての解説です。

若者と高齢者の肺活量を比較すると、以下のポイントが挙げられます:
1. 肺活量の定義
肺活量(vital capacity, VC)は、最大限吸い込んだ後に吐き出せる空気の量を指します。これは肺の機能や健康状態を評価する重要な指標です。
2. 若者の肺活量
- ピーク時期: 肺活量は一般的に20〜30歳頃にピークを迎えます。この時期の若者は、肺の筋力や弾力性が最も高く、呼吸筋(横隔膜や肋間筋)も強い。
- 平均値: 健康な若者の肺活量は、性別や身長にもよりますが、男性で約4〜5L、女性で約3〜4L程度。
- 影響要因: 運動習慣や喫煙の有無、体格などが影響します。運動選手は特に高い肺活量を持つ傾向があります。
3. 高齢者の肺活量
- 加齢による変化: 年齢とともに肺の弾力性が低下し、胸郭の柔軟性や呼吸筋の力も減少します。これにより肺活量は徐々に低下します。
- 平均値: 60歳以上の高齢者では、肺活量が若者の約70〜80%程度になることが一般的。80歳以上ではさらに低下する傾向。
- 影響要因: 慢性 obstructive pulmonary disease(COPD)や心肺疾患、運動不足、姿勢の悪化などが肺活量をさらに下げる可能性があります。
4. 比較のポイント
- 減少率: 肺活量は20歳以降、10年ごとに約5〜10%低下するとされています。高齢者では若者の約2/3程度の肺活量になることが多い。
- 性差: 男性の方が女性よりも肺活量が大きい傾向は、若者でも高齢者でも変わりませんが、加齢による減少率はほぼ同等。
- 生活習慣の影響: 定期的な運動(特に有酸素運動)は、若者・高齢者ともに肺活量の維持・向上に役立ちます。高齢者でも適切な運動で肺機能の低下を遅らせることが可能。
5. 具体例(参考値)
- 20歳男性(身長170cm):約4.5L
- 70歳男性(身長170cm):約3.0〜3.5L
- 20歳女性(身長160cm):約3.5L
- 70歳女性(身長160cm):約2.5〜3.0L
6. 補足
- 測定方法: 肺活量はスパイロメーターを用いて測定されます。医療機関や健康診断で評価可能。
- 健康への影響: 肺活量の低下は高齢者の日常生活動作(ADL)や運動耐容性の低下に繋がるため、呼吸筋トレーニングや運動が推奨されます。